随着グローバル化が加速する現代社会において、人の越境移動がもたらす社会的変容への関心が高まるなか、日本移民学会は移民研究の多角的な発展を牽引する学術プラットフォームとして機能し続けている。1992年に設立された同学会は、当初から「移民をめぐる現象を総合科学の手法で解明する」という理念を掲げ、社会学や人類学、法学、経済学などの垣根を超えた共同研究を推進してきた。初期の研究テーマが日系ブラジル人労働者や国際結婚に焦点を絞っていた時代から、現在では技能実習制度の課題から難民認定プロセスの実態調査、デジタルテクノロジーが移民コミュニティにもたらす影響に至るまで、その研究対象は社会の変化と連動して拡大を続けている。
この学術組織が特筆すべき点は、単なる研究者の交流の場に留まらない政策提言機能にある。2018年の入管法改正前夜には、実務家や法律家を交えた公開シンポジウムを連続開催し、政府の有識者会議に実証データを提供するなど、学知と現実政治の接点を構築してきた。特に少子高齢化が加速する地方都市における移民受入れモデルの分析では、人口減少地域の自治体と共同でフィールドワークを実施し、多文化共生の具体的事例を積み重ねている。現在進行形で変容する移民政策の動向を捉えるため、同学会ではビッグデータを活用した移民トレンド分析や、ブロックチェーン技術を用いた技能実習生のキャリア追跡調査など、デジタルヒューマニティーズの手法を積極導入する新たな動きも見られる。